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chiha memo

漫画「ちはやふる」の粗筋と伏線と名言と感想の個人的メモ

第177首 言うてないなんも

若宮は伊勢の自宅兼明星会練習場を訪ねる。初めて来たのは六歳の時。

暑くても寒くても通った うちが走んのは 伊勢先生のとこに行くときだけやった

伊勢は不在だったが、クイーン戦で大盤係を務めた結川桃との練習を会の女性に勧められる。

クイーンのお手並み 話のタネに拝見しまひょか

遠慮しようとする結川と、正座して待つ小学生達の様子が、そんな風に若宮には見えた。若宮は結川を圧倒するが、一字決まりを取られた時に結川の独特の配置が若宮と同じ左利きであるからだと気付く。若宮はほくそ笑む。

いつも戦う右利きの人より 手ごわいっちゅうわけか? そうやないとなあ

結川が若宮の陣から取ったことで周囲も沸き、結川も安堵したような笑みを漏らす。それを見て、若宮はまた鋭く取り始める。15枚差で勝負がついた。

「さすが 結川さん 大学でもがんばってはるんやろなあ お強いわあ」

イケズを言う若宮に戸惑う皆を余所に、練習場を後にした。

もう来ん もう小学生やない

帰宅すると、テレビの密着取材やラジオ、バラエティ番組のオファーが来ていた。

「かるたのプロになるんなら それはこういうことや 有名になって自分売り込んで かるたをやってるあんたを 価値あるものにするんや」

そんな母の狙いを聞きながら、若宮は思う。

もう走らん

 

千早は須藤に連れられ、北央の練習場へ行く。どういう組み合わせなのか、まさか付き合ってるのか、と騒然とする部員達。北央は文武両道なので、彼等は三年生も二月の大会まで引退しない。須藤は前の試合の続きからやろうと言い、千早が読まれた札を挙げるが記憶があやふやで、須藤が小馬鹿にする。

「須藤さんだって 絶対完璧だって言えるんですか? 太一だったら完璧なんだろうなー」

千早にそう言われ、須藤はふと無言になってから、最初から取り直すことに決める。

「読手だれにする? コピーしてきてやったぜ 音源」

須藤が掲げたUSBメモリを見る千早だが、周防に断られたのを踏まえ、拒否する。

「須藤さんはどんなに性格が悪くても 卑怯なことしちゃダメなんです」

またも無言になる須藤。見入る部員達。結局、小峰読手や廣田読手の古くて珍しいありあけを使うことになった。

「気ぃ抜くなよ おれは 勝つかるたを磨きたいんだ」

勝つかるた――須藤の言葉を意識しながら、千早は挑む。

 

須藤は千早を読手講習会にも連れて行く。講師の山城今日子の指導で、初めて参加した千早は注意されてばかり。講習会が終了し、公認読手のテストに進める三人の中に須藤が選ばれた。部屋をそっと出て一人でガッツポーズする須藤を、千早は見ていた。

「須藤さんは… なんでかるたやってるの? 好きなの?」

千早が須藤に問うが、「べつにいいじゃん」とはぐらかされる。

『勝つかるたを磨きたい』 『名人になりたい』

須藤が前に話したことを考えながら、千早は須藤と北央で練習。マークが薄い札を的確に取られ、連取が出来ない。須藤は口撃も効果的に使って来る。

1勝1勝にこだわりながら 登ってる

畳のいぐさが千早の足に刺さった。畳も札もボロボロで、須藤がそれに目をやり口を開く。

「……いつか おれがかるた協会の会長になったら おもしろくねえ? ハハ 夢とかじゃねーけど アリじゃね? 向いてね? 普通に就職して かるたも続けて ずっと続けて じじいになっても続けて 運営のほうもいろいろやって 後輩のかるた部のやつらが 安心して楽しくかるたやれるように 仕事しながらやる それがおれの思う文武両道 かるた協会会長って全員 名人経験者なんだぜ 笑うー」

須藤の言葉に感銘を受ける北央部員達と先生、そして千早。千早自身も高校のかるた部の先生になって、大江や駒野みたいなのを集めて、と想像するが、彼等を思うと太一の台詞が蘇る。

かるたは一段落だからな

須藤が千早に訊ねる。

「綾瀬 耳のいいやつはなにを聴いてんだ? 正直 おれが音源聞きこんでも意味ねーんだ 根本からちがうみたいなんだ」

どうやったら周防に勝てるのか。考えながら、千早は答える。

「わかんないけど 私は速さを磨きたい いろんな手で来てください」

 

若宮はバラエティ番組に出演。対戦相手の一人にはわざと札を取らせてあげなくてはならない。拒否するが、母に窘められた。

「これはテレビや おもしろさ優先や プロになるんやろ」

言われた通り相手に取らせた札は「しのぶれど」。イケズは禁止! という母の言い付けも守り、愛想を振りまく。札が小さな神様に見えると語っていた若宮に、司会者が今は何と言っているかと訊く。

「えらい楽しい って 言うてます」

そう答えて札に目を落とす若宮だが、収録後に札の入った箱を何度も翳してみる。

言うてない 言うてない なんも

箱を取り落とし、床に散らばる札。

「…聞こえへん…」

 

ちはやふる(34) (BE LOVE KC)

ちはやふる(34) (BE LOVE KC)

 

 

memo

北央には行き難いだろうと思っていたら、須藤という最強カードが舞い込んで来た。しかも、ヒョロもまだ残っていたw A級選手が他にもいるのに、千早と須藤はひたすら二人で対戦しているようだが。

その須藤さん、すっかりいい人……! かるたに対しても意外なレベルで熱くて真剣だ。初期から何気に親しかったし案外お似合いじゃん、とも思うが、恋愛に発展しそうな気配は皆無。物語ももう終盤だし、そんな寄り道も要らないけどね。千早の口から太一の名前が漏れたことに、須藤は何か感じることがあった様子。

卑怯といえば太一に纏わる言葉として何度も登場しているけれど、周防のかるたを指すのだろう。そもそも千早は太一をそう評価していないと見る。

詩暢も迷走中。全国大会個人戦で負けた後の詩暢母の謝罪は何だったのか。襷を奪ったというピンポイントでの反省なのか。ともあれ、母はちっとも分かってないらしい。明星会では、小石川ポカ作さんの名前がさりげなく登場。西日本エリアに移り、新や村尾の対抗馬か。女子の西代表は二年連続で恵夢たんでしかも連敗しているし、挑戦者決定戦の対千早で負けさせても惜しくないキャラってことで、結川さんが来るのかな。左利きだし、仮想詩暢としても丁度良い役割。ただ、千早は長い描写の末に恵夢に負けて終わっているから、再戦も捨て難い。

その詩暢が走っている場面、手書きで何度も「遅い」と描かれているが、第175首で太一は彼女のことを「運動神経がすごい」と表現している。走るセンスだけが無いのであって、かるた面に特化した反射神経の持ち主なのかもしれないけれど。

明星会で読まれた札は「わすらるる」「めぐりあいて」「ももしきや」「よのなかよ」「こいすちょう」。テレビ収録時は「ひともおし」、相手に取らせたのが「しのぶれど」。事前に札の指定があったのなら変更して貰っておくべきだが、制作側や詩暢母の無知ゆえか、それとも詩暢本人があえてこの札を取らせたのか。本当の自分じゃない、というメッセージを込めて。詩暢の指先にあるのは「きみがため・お」、その隣は「おぐらやま」。他のコマで畳に描写されているのは「おおえやま」「せをやはみ」、敵陣に「こころにも」。