新は村尾との会話で、友達はかるた絡みくらいと指摘され、由宇もいると反論するが、村尾は「兄妹みたいなもんやろ」と否定。新が他には、と考えているところで、村尾にメールが届く。
「 新はラッキーやわ 神様がそれでいいって言ってくれとる気がする」
村尾が見せた画面には、東日本代表は太一と千早、との報。
「友達なんやろ 2人とも」
すごいな、と呟きながら、新は小学生の時に千早が言ったことを思い返していた。
あたしたちにはかるたがあるから また会えるんじゃないの?
午前五時。千早は勉強のため早起きするが、次の試合に向けて用意しておいた着物が目に留まり試着。
頭の中は、勉強とかるたのことで占められている。
私 勝ったんだ 東の代表になれたんだ 次に進めるんだ――
太一は学校帰りに母と袴を買いに行く予定が、急遽一人で行く羽目になった。西田と駒野を捕まえると、彼等は太一を大江の元へ連れて行く。
「着物作ってもらうとか初めてで…… いろいろ失礼があったら困る…」
そう言って赤面する太一に、キュンとする三人。
これは おそらく 真島太一が人を頼る きわめて稀なケース
大江は千早も一緒にと誘うが、千早には先約があった。背中を向けて去る千早に、駒野が別件で声を掛けたところ、千早の顔が赤い。
「真島のことは任せとけって 綾瀬もがんばれよ」
四人を見送る千早――
「呉服の大江」を訪れた太一に、大江母は大歓喜。黒紋付あたりか、と太一母は注文していたようだが。
「えっ… え いや あの よくわかんないんですけど いままで試合でずっと貸してくださってたみたいな ああいう袴がいいんです 場に合うとか そういうのわかんないんですが ダ ダメでしょうか…」
赤面しつつ要望を述べる太一に、大江母の表情が締まる。
「勝つためのユニフォームとして 真島太一様のために 仕立てさせていただきます」
生地、長襦袢の有無、武者袴、と決まって一段落。太一は足袋を二つ買い、西田と駒野に差し出す。
「寒い中さ この間 ずっと見てくれてて あの… あ ありが…… …… もし おれが勝ったら 2人のうちどっちか大盤係やってよ」
二人は驚愕。
「とりあえず綿谷新がラスボスなんだと思ってた ――けど 周防さん 倒しにいくの!?」
真顔で静かに「うん」と返事する太一。
その頃、千早は猪熊宅を訪ねていた。
「詩暢ちゃんに勝つくらいに強くなりたくて」
猪熊は応える。
「だったら私にくらいは勝てないと」
対戦の準備をする前に、千早が電話の電源を切ろうと手に取ると、駒野から添付ファイル付きのメールが届いていた。七人の専任読手の音声を、録画から探して上の句だけ抽出したものらしい。それを共に聴いた猪熊も衝撃を受けている。
「九頭竜さんの読みって… 独特なところあるわね……」
千早もまた、かつて新と太一に言った「あたしたちには~」と、周防や若宮を思い浮かべる。
会って そして 行くんだ その先へ
memo
太一、袴を買いに行くの巻。大江母は流石プロフェッショナルだし、はっちゃけつつもお母さん然としている。第103首の吉野会大会決勝戦前に着物を直して貰ったのを、太一が回想しているのも嬉しいね。
千早の着物関連グッズの羅列には、全国大会で使った鉢巻も続きそう。また、太一は助言通りに長襦袢ではなくタンクトップにする流れかもだが、千早は候補に入れているのをどうするのかな。
三度も登場する「かるたがあるからまた会える」の肝は「友達」か。太一はかつてなく赤面しまくるわ、名人に勝つ宣言をしたりと、肉机達に以前より一層気を許している。高校選手権時の第82首の机プロファイリングではプライドが高いとされていたのが、「三勝するぞ」宣言を経て、第159首で描かれた「振られ報告」あたりから距離感が大きく変化したような。
一方の新は友達として真っ先に同性のではなく由宇を挙げる有様。兄妹というより、姉と弟っぽい気がするが。ともあれ、由宇からすれば友達扱いは不満であろうから、新の認識は近いうちに問題に上がるだろう。千早と太一の関係と同じように。
千早も太一も東西戦は眼中に無いのが面白い。第188首の太一の独白「新のところへは自分で行くよ」はどうしたw 勿論、東西戦は通過点でしかないし、新を変に意識しないよう努めているだけかもだが。新は太一と対戦経験があり、白波会を研究したのも仇となって、新型太一に振り回されそう。
名人戦クイーン戦あたりで、京都在住の九頭竜さんが登場するのだろうか。音声サンプルで「おとにきく」と「を(お)ぐらやま」が取り上げられているが、第171首にて詩暢が「お」は攻めにくい札と述べている。これも鍵になりそうだ。
机くんに声を掛けられた時の千早は、太一が着物を買うという嬉しさをかみ殺している、と解釈したが自信ない。もしくは、ヒョロの言葉を気にして、太一と絡むのを我慢したのか。ていうか、絵そのものが分かり難いよね……