太一対新は、新が序盤で五枚差と優勢。新は太一に鋭い視線を送る。
いま 目の前におるのは 勝つか負けるかようわからんライバル ぶっ潰す
栗山先生の見立てでは、新は自分の取りに集中している。
かるたってやつは 取るのは簡単なんや 難しいのは いかに取らずに逃げるか 練習しかないんや これは スキルの高さがモロに出るが
西田やヒョロも、太一が厳しいと見ている。
綿谷に実力通りを出されたら厳しい それがわかってたから いろんな手を使ったんだろ? いちいちモメるのも 髪を突然切ったのだってそうだ
試合会場を後にした周防は、喫茶店でかるたの本を読んでいる女性が太一母と気付き、無理矢理同席。
「ぼくは現国とか小論文を教えていて 『核』というものをよく意識します 物語の核 人物の言いたいことの核 どんな長文でもつきつめれば 悲鳴のような ひとつの想いが見えてくる 人も同じです」
周防は、太一母は太一に、太一は新に、それぞれ頑張りを認めて貰いたいのではないかと言う。思い浮べているのは、太一が「執着したら勝てない」と言った姿。
「がんばって がんばって その努力はきっと伝わる でも… 綿谷くんには勝てません」
笑みを浮かべながら試合に望んでいる太一に、驚く新、観戦している西田、ヒョロ、花野。太一は自陣の奥に配置した札を、立て続けに二枚守って取る。審判の鷲尾や周囲は新が優勢と見ていたが、これまで新が取ったのが全部自陣だったことに気付く。
敵陣奥を取りきれてないから 流れをまだつかみきれてない
太一が新の陣から抜く。渡り手をブロックするスタイルから変えた。
賭けに勝ったぶん 流れがくるぞ
西田はかつて北野先生に、音の聞き分けの磨き方を聞いていた。
大昔から一択! 強い相手との練習しかねぇんだよ 感じのいい相手との!
太一は練習を頑張っていたが、その相手は……
周防と話していた太一母が、試合に戻ると言う。
「腹が立ってきました なんなんですか 負ける負けるって なんでそんなこと言うんですか ちなみに私には娘もおりまして 認めてほしいとしたら二人です 勝手な決めつけはやめてください」
太一母を見送る周防は独り言。
「だって 師が悪いから…… あ ごめん 弟子じゃない 弟子じゃない」
「きみ・お」がまだあるのに、自陣の「きり」で速い取りを見せた太一に驚く原田。
まつげくん こんなに「感じ」がよかったか?
太一は「す」も速く取る。千早も視線を送る。南雲会以下、皆もまぐれではないと驚いている。
新がいくら狙っても 自陣ならば守り切るのか
太一の「感じ」は周防の傍にいたことで磨かれていた。
わかったんだ 聴こえてるのに いらないと思って 脳が拾いあげない音がある
西田とヒョロは、自分達の夢について考える。夢は名人ではない。
おれたちはさ 綿谷新の瞳に映りたい 攪乱とかじゃなくて 小細工とかじゃなくて なにひとつ実力の削られぬ綿谷新に勝ちたい 青春全部懸けてきた 本当の強さで
memo
太一は小細工して負けたから、二試合目は正攻法かつ徹底的に守りがるたにしたらしい。途中、太一の笑顔の意味が良く分からないというか、描かれ方が気持ち悪い……。太一母の核の話、肉まんヒョロの独白も、無理矢理こじつけた感じで、今回の話はしっくり来なかった。
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登場した札については、一部に間違いがあったとのことで、次号にて訂正発表があった。「みよしのの」「あきかぜに(あさかぜ、と明かな誤植)」「きみがため・は」「ひとはいさ」「かぜそよぐ(誤:なげけとて)」「きりぎりす」。
そして最後に太一が取ったのが、雑誌では当初「ふくからに」で絵が描かれているのも「ふ」札だが、正しくは「すみのえの」とのこと。この「す」は、次の話の冒頭にて千早が取り逃しており、回が跨って同時場面を描いているということになるが、訂正で良かったのか……?